牛タン料理にも様々な種類がある。馴染みがあるのは薄く切ったタン塩レモンか、最近では肉厚の牛タンに格子状に切れ目を入れて焼いたものもよく見る。
どちらの料理も高温短時間で焼き、香ばしい風味とコリコリした食感が味わえる。確かに、これぞ牛タンの醍醐味と感じられる瞬間だ。
だがタンシチューもまた牛タンたらしめる料理なのである。
タンシチューの調理法は打って変わって長時間かけて煮込む料理だ。煮終わると肉の部分はとろりと柔らかくなり、出汁には肉から出たエキスが馴染む。
短時間で焼いた場合にコリコリした部分は長時間で煮込んだ場合にもその独創性を発揮してくれる。キメ細かく折り畳むようにして整列している肉の繊維は歯の表面にとって何とも快適でオリジナリルなクッション性を演出してくれる。また出汁に滲み出たエキスの香りはタンシチューへの料理へと迎え入れるかのような優しさがある。そして味はと言えばとにかく繊細で、耳を傾ければ傾けるほど聞こえてくるような味がある。しかも舌の居心地が良いのか、しばらくそこに居座り続けてくれる。
姿一見、野獣のような印象のある牛タンも丁寧な仕込みでそのベールを脱がせば気品ある香りと赤ちゃんのような繊細な味があるんです。
コメント